放射能と食品〜ベータちゃんの活用をめぐって

放射性物質から内部被爆、食品の放射線量測定までの流れを整理してみる。

■定義
放射能(力)=物質が放射線を出す活性力
放射能(力)をもつ=放射線を出す能力がある
放射性物質放射能(力)をもつ物質

放射線とは:
不安定な原子核は、崩壊しながらより安定的な原子核に変化していく。
崩壊に際して、
・α粒子が原子核から飛び出したり(αアルファ崩壊)、
中性子が陽子に変わって電子を放出したり(βベータ崩壊)、
・崩壊後の残存エネルギーを放出したり(γガンマ崩壊)する。
放出されるα波、β波、γ線などを総称して放射線という。
崩壊は、核分裂原子力発電の発熱や原子爆弾の原理)とは区別される。

1秒間に1つの原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量が1Bq。
原子核によって、1単位量の放射能力は異なる。
例:この水は300Bqのセシウム137を含む
  =毎秒300個のセシウム137原子核が崩壊して放射線を出す。
Svは、人体への影響を一律に測るための尺度。
Bq⇔Svの変換は、原子核の種類によって異なる。

放射線の本質と遮蔽方法:
α粒子:紙を通過できない
β粒子(電子):厚1cmのプラスチック板を通過できない
γ線(電磁波だが電荷がない):比重の高い物質(鉛、鉄、コンクリート)で減衰。

■崩壊の性質:
①崩壊のしかたは原子核の種類=核種によって決まっている。
 同じ元素でも複数の同位体があり、異なる核種に区別される。
②温度・濃度などの条件の影響を受けない、独立した現象。
③個々の原子の振る舞いの位置・時間で特定できない、確率的な現象...量子力学的。

■物理的半減期
崩壊しないで残っている原子核の数が半分になるまでに必要な時間。
半減期を迎えたからといって放射線が出なくなるわけではない。

半減期をTとすると、
時間T→残数1/2
時間2T→残数1/4
時間aT→残数(1/2)のa乗
...高校数学で扱う指数・対数で、残数と時間の関係は簡明に定義できる。

例1:グラフは、半減期30年のセシウムの場合。
例2:放射性ヨウ素131の半減期8日。300Bq/kgの放射線量は、56日(8日x7)たつと、
残数はもとの0.78125%(1/2の7乗)の2.34Bq/kgになる。
あとは、生体に遅効性の影響がでない線引きをどこでするかの問題となる。

希ガスとして拡散しやすい放射性物質の崩壊の様態

ヨウ素131
⇒β・γ崩壊⇒キセノン131

キセノン133(半減期9時間)⇒β崩壊⇒セシウム133(安定)+中性子
セシウム134(半減期2年) ⇒β・γ崩壊⇒バリウム134

セシウム137(半減期30年) : カリウムKと似た 水溶性がある
⇒β崩壊⇒バリウム137m(半減期3分)⇒γ崩壊⇒バリウム137(安定)

ストロンチウム90(半減期29年) : カルシウムCaと置き換わって体内に蓄積
⇒β崩壊⇒イットリウム90(半減期3日)⇒γ崩壊⇒ジルコニウム90

わかること
・β崩壊後は半減期が短い
・β粒子を測定できれば、放射性物質原子核の数はわかる
ヨウ素131なのかセシウム137なのか=核種の判定は、β・γ量だけでは無理。

■生物から見た放射性物質
ベータちゃんを使った放射線測定にあたっては、次のことを理解している必要がある。

ヨウ素I:
・生物は放射性ヨウ素を他の放射性のないヨウ素と区別できない。選択せず取り込む。
・ヒトへの病因:甲状腺がん

セシウムCs:
・生物はカリウムKとセシウムCsを区別できない。
・水溶性であり、性質もカリウムKと似ている。
 カリウム同位体(39K:93.3%, 40K:0.01%, 41K:6.7%)のうち、カリウム40は放射性物質
・動物での濃度は骨組織で低く、筋組織で高い
・生体内での半減期は70日以下
・ヒトの病因:

ストロンチウムSr:
・生物はカルシウムCaとストロンチウムSrを区別できない。
・当然、動物では骨に蓄積。牛より馬の方が高濃度で蓄積。加齢で蓄積量は増える。
・ヒトの病因:

自然界にも放射性物質は存在する。炭素14(全炭素の0.00000000012%)、カリウム40は代表的な内部被爆源。

生物的半減期
人や生物の体内に取り込まれた放射性物質が、排泄されるまでの時間。
とはいえ、全量排出は期待できないと考えたほうがよい。
生物のコンディションに左右されるといわれる。
代謝能力が高いと、排出されやすい(実証されているかは?)。
・その栄養素(カリウム等)が足りていると、生物は余分には取り込まない。
 逆に、貧栄養の土壌の植物は、養分と誤認して、セシウムストロンチウム
 取り込みやすい(チェルノブイリ後に比較検証されている)

わかること
ヨウ素カリウム、カルシウムを多く含む農産品は、要注意。
 家にある本「四訂 食品成分表」でチェックする必要あり。
 例:小松菜はカルシウムが多い

・昆布は、ヨウ素のほかカリウムも含むので、原発被爆せずとも放射線を出す。
 セシウムを含むかの判定には、検体(原発被爆していない)との比量が必要。

原発被爆していないヨウ素カリウム・カルシウムを十分に取って、適度な運動をおこない、身体を健康に保つことが、内部被爆の影響度を下げることにつながる(であろう)。

■ベータちゃんの感度
通常のガイガーカウンタよりは感度はいい。
100gあたりのカリウム含有量1000mg程度から検出できる。
ほうれん草(700mg)で、通常は検出しないのに、検出したら放射性物質を含むと考えてよい。
しかし、検出しないからといって、放射性物質を含まないとはいえない。
ベータちゃんの検知閾値以下である可能性があるため。

1gのセシウム137の放射能の量は 3.215TBq
1gのカリウム当りの放射能強度は30.4 Bq

この差と、農産品に含む自然放射性物質との放射線量の差をまとめる予定

(6月30日加筆)
β線に関しては、業務用のサーベイメータ並みの感度と思う。
ベータちゃん発売元千代田テクノルからの連絡:

ベータちゃんのGM
  サイズ   : φ53.6×15.5mm
  使用高圧 : 900V
  エネルギー: β線に対しては、約50KeV以上

         γ線に対しては、数10KeV以上

ガンマ線が検出器に入射してその壁面と相互作用(電離作用)により
イオン(電子)ができると、ベータ線が入射したときと同じように応答する。

相互作用による電子の発生を防ぐことができないため、ガンマ線も一部検
出されてしまう、という意味で(ガンマ線)と表記。